1912年創業と108年の歴史を持つ吉本興業。「地方創生・デジタル・アジア」をキーワードにテクノロジー、海外進出にも意欲的な同社。グループのビジョンを描く会長の大崎氏と社外取締役の坪田氏がまとめた『吉本興業の約束 エンタメの未来戦略』。この本に込めた坪田氏の思いとはーー。 吉本興業で仕事をするようになり、不思議に思ったことがあります。それは、大﨑さんと部長や社員、また芸人の間にギャップがあることです。私にとって、大﨑さんは一番の親友であり、尊敬する人物であり、理想の大人。ところが、社員も業界の人も、大﨑さんを怖い人だと思っている。洞察力の鋭さが怖いと感じる原因かもしれませんが、大﨑さんも人間ですし、大﨑さんの経験や功績から学ぶことはたくさんあります。
私は坪田塾の塾長の他、月1回のペースで社員研修やマネジメント研修の講演会をしていますが、大﨑さんのマネジメントやプロデュース力には驚かされます。
例えば、大﨑さんと初めて会った会食でのこと。先に部屋に入り、下座に座って待っていたところ、大﨑さんが現れて上座を勧めるので「いえいえ」と断わると、「次回、上座に座るから」と言われ、上座に座ることになりました。この時の大﨑さんの気遣いと、うまく動かされたのにまったく嫌な気持ちにならなかったことに感激しました。
また、ビジネスにはIPの管理や出版など〝掛け算型〟のビジネスとテレビ出演など〝足し算型〟のビジネスがありますが、大﨑さんはどちらかというと〝掛け算型〟を好む経営者。ダウンタウンの大成功も大﨑さんのその手腕が発揮されています。
それを実感したのが、大阪での大﨑さんとのトークショー。大﨑さんが「トークショーだから、どっちが喋ってもいい」と言って、お客さん1人1人に自己紹介をさせ、大盛況のうちにイベントは終了。スタッフは「大阪の人は面白いね」と言っていましたが、その場を面白くしたのは、大阪の人ではなく、大﨑さんのプロデュース力。こんな偉大な経営者を怖がるのは本当にもったいないことです。
この本は、吉本興業の未来戦略と同時に大﨑さんのありのままの姿を〝通訳〟として伝えたいと思って作りました。
ぜひ、多くの方に読んでいただけたら幸いです。