2020-12-17

集客とESGの両立へ ローソンの廃棄ロス削減策

「大量出店で売り上げを伸ばすという必勝パタンはもう通用しない」─。こうした声があがる中、様々な実証実験を行っているのがローソン。関係者が「食品の廃棄ロス削減に向けた取り組みは反響も大きい」というように、近年は社会や環境を意識した顧客も増加。少子高齢化、人手不足の時代にあって、今後のコンビニ業界が生きる道とは─。

社会的責任を果たしながら加盟店の支援にも繋げる



 学校帰りや仕事帰りで帰宅する人の多い夕方から夜間にかけての時間帯。とあるユーザーのスマートフォンに、弁当やおにぎり、調理パンなどの値引き情報が送られてきた。顧客はお得に買い物ができ、店側にとっては食品の廃棄ロスを減らせる便利なサービスである─。

 2020年10月、埼玉県内のローソン10 店舗である実証実験が行われた。ローソンがKDDIと共同で行ったもので、KDDIが保有する『au PAY アプリ』のデータとローソンの『Pontaポイント』の購買データを活用。両社とも顧客の同意を得た上で、実際の購買行動につながるかを検証した。

 具体的には、顧客のスマホからリアルタイムの位置情報などを把握できるため、顧客が店舗周辺に近づくと、店舗限定の商品情報が送られてくる。顧客は消費期限が近付いた対象商品を最大半額で購入できたり、ポイントが還元される仕組みで、店側にとっては顧客の来店を促進できる。従来、顧客は実際に店舗に入るまで〝見切り品〟の有無は確認できなかったが、事前に把握することができるというものだ。

「ローソン保有のデータと位置情報などの組み合わせにより客様の状況を推定することで、効果的に特典をお届けすると共に、お客様の行動が施策実施の前後で変化した事例も具体的に確認することができた。特に廃棄ロス削減に向けた取り組みは反響も大きく、社会的責任を果たしながら加盟店の支援にも繋げるよう、小規模に行なった実験を拡げるための仕組み作りが今後の課題だと考えている」

 ローソン データ戦略部部長の向山貴史氏はこう語る。

 2019年12月、両社の顧客基盤を生かしたデータマーケティングの推進や新たな消費体験を創出することを目的に、KDDIと資本業務提携を締結したローソン。あれから1年になるのを前に行われたのが今回の実証実験だ。

 本来食べられるのに捨てられる食品、いわゆる〝廃棄ロス〟問題が大きな社会課題となっている。廃棄ロスは世界で約13億㌧、日本でも約600万㌧発生。消費者には出来立ての商品から手に取りたいという考えが根強く、それも廃棄ロスを生み出す要因になっている。

 ローソンは2019年に「売上あたりの食品ロスを2018年度対比で30年までに50%削減する」(ローソン社長の竹増貞信氏)と宣言。消費期限間近の商品にポイントを付与した販売の実験を始めるなど、廃棄ロス問題に向き合ってきた。

 ただ、コンビニエンスストア業界は原則定価販売が基本で、本部からの同意を得ない限り、基本的に見切り品の販売は認められてこなかった。しかし、潮目が変わったのは2020年9月。公正取引委員会は本部による見切り品の販売制限は独占禁止法違反にあたる可能性があると指摘。現在は各社が加盟店対応に追われている。

 今回のローソンの実験は、デジタル技術と見切り品の値引き販売を組み合わせて、加盟店が負担する廃棄ロス削減に取り組んでいくことが目的。今後は実験の結果を踏まえつつ、2021年度中に全国約1万4千弱のローソン店舗への導入を目指していくという。

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