2022-01-03

どうなる? 2022年のビール業界 小路明善・アサヒグループホールディングス会長に直撃!

「生ジョッキ缶」が大ヒット 商品開発に欠かせない3要素


 ── グローバル経営を展開しているアサヒグループホールディングス会長の小路明善さんから見た22年のビール業界の展望とは。

 小路 コロナ禍で一時的に起こった現象とニューノーマルになる現象を見極めて、ビール事業をグローバルで対応していかなければいけないと感じています。当たり前ですが、人の動きが止まると商品も止まります。ということは、我々も単にビールを造って売るだけではなく、いかに人流を止めないような施策を打つかということです。

 そのためには安全・安心をベースに「体験消費」と言われている消費をいかに行っていくかが重要です。もう1つは未来をいかに創造していくかです。未来の消費、あるいはお酒に対する価値観がどう変化していかを予測して、商品やサービスを展開していかなければなりません。

 ―― 新たな視点が重要だと。

 小路 ええ。「バック・キャスティング経営」と言われますね。当社では2050年の世界がどんな消費構造で、お酒に対する価値観がどう変化しているかを分析しました。その中から出てきたのが「微アルコール」です。

 今のミレニアル世代とZ世代が40代や50代のヘビーユーザーになるときには、多分アルコールを飲むこと自体が減ると。そうなると、ノンアルコールではなくてアルコール度数0.5%といった商品のニーズが増えてくると予測できたわけです。

 ── 一方で、主力商品「スーパードライ」の進化という点では、「生ジョッキ缶」が大ヒットしました。ヒットの要因は。

 小路 21年も10%程度の国内のビール市場の縮小が予測されます。特に20年の飲食市場は約4割減少しました。代わりに家庭消費が増えたのです。これにより自分が好きなものを飲む傾向が強くなりました。それだけ消費の多様化や多価値化が進んだのです。「生ジョッキ缶」はそこに対応できたわけです。

 ── コト消費ですね。

 小路 はい。蓋を開けて自然に泡が出てきて、お店の生ビールのような味が家庭で体験できると。見る楽しみという「体験消費」ですね。また、これまで伸びてきた第三のビールが前年比でマイナスになる一方、ビールはプラスになっています。つまり、家庭消費の場合は、より本物を求めるということです。

 商品は「ファンクショナル・バリュー」と「エモーショナル・バリュー」「エクスペリエンス・バリュー」があります。機能は糖質ゼロなど、エモーショナルは感覚ですから缶のデザインなどです。そして、エクスペリエンスが体験です。これらの3つの要素のバランスを取った商品をいかに作っていくかが未来に対応することにもなってくるのではないかと思います。

ビールの主戦場は家庭用にシフト 「コト消費」「健康」がキーワード

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