2021-12-28

どうなる? 日本のエネルギー① 北村俊昭・INPEX会長を直撃!

安定供給と脱炭素への貢献



 ―― INPEX会長の北村俊昭さん、天然ガスや原油などあらゆる資源が高騰する中で、今後の見通しを聞かせて下さい。

 北村 わたしは50年近くエネルギーの世界にいますが、この半年で起こっている世界各地での横断的な石炭、天然ガス、LNG(液化天然ガス)、石油の価格上昇は初めての経験です。世界同時多発型エネルギー需給ひっ迫、価格高騰と言っていい状態です。

 原因は三つあると思っていまして、一つはコロナからの急速な需要回復。二つ目は、それに対して石炭や石油、天然ガスなどへの開発投資が不足している。最後は再生可能エネルギーの脆弱性が明らかになってきたと。欧州での風量不足や、ブラジルの水不足といった、天候要因も大きかったですね。この三つの要因は世界に共通して横たわる大きな底流なんです。

 大事なことは、今後どうなるかですが、コロナからの回復で世界経済が動き始めますから、確実に需要は増えるでしょう。しかし、供給面を考えたら、石油・ガスなどの上流部門への投資は10年前の半分くらいの水準です。世界的に脱炭素化の流れが加速していますから、上流事業への投資が伸びないまま、供給力不足の問題は中長期的に続くと見ておいた方がいいと思います。

 ―― そうなると、無資源国・日本としては気がかりですね。

 北村 ええ。米国や欧州には域内に資源があるし、大陸ですから隣国間で融通もできます。そういう意味では、無資源で島国の日本が一番脆弱なので、エネルギーの安定供給ということをきっちりと考えていく必要がある。

 われわれも石油と天然ガスを通じてエネルギーの安定供給に貢献します。これは当社のミッションであり、脱炭素時代になっても変わりません。その上で、カーボンニュートラル社会の実現に向け、当社が貢献できる分野は、水素とアンモニアそしてCCS(CO2の回収・貯留技術)です。

 水素の製造方法はいくつかありますが、大量に安くつくる方法は、実は天然ガスを原料にすることなんです。製造過程でCO2が出ますが、CCSやCCUS(CO2の回収・利用・貯留技術)によってCO2は地中に閉じ込めるため、クリーンな水素が製造できます。

 ―― そこにINPEXの知見やノウハウが活用できると。

 北村 ええ。ですから、天然ガス由来でつくったクリーン水素には、当社の技術が活用できる。いわば、水素は既存の天然ガス事業の進化系ですから、エネルギーの安定供給に加え、脱炭素社会を睨んだ水素関連の事業でもお役に立てることが多いと考えています。また、このCCSは、カーボンニュートラルに向けての「ゲームチェンジャー」となる技術でもあり、一層注力していく予定です。

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