次世代の半導体産業を見据えて ─ 戦略物資である半導体の戦略の方向性とは。
小林 半導体が日常生活にとって必要不可欠であることは、今では多くの国民の皆様が肌で感じていると思います。私の地元でも、リフォーム業者の方から、お風呂の給湯器が足りない。リフォーム会社にFAX機が足りないといった話を聞きます。自動車販売業者の方からは、注文を受けても納車まで3カ月かかるといった話も聞いています。
更に、今後、社会のデジタル化が進み、半導体の安定供給は死活的に重要になります。だからこそ、他の主要国が半導体戦略を国家戦略に掲げ、国の総力を挙げて製造工場を作ったり、人材を自国内に囲い込もうとする動きが出てきているわけです。
その中で日本はどうすべきか。かつて日本の独壇場だった半導体産業ですが、今の立ち位置は極めて心細いものです。そのまま諦めるのか、もう一回勝負をかけるのか。私は後者だと思っています。
─ 半導体メーカーの台湾積体電路製造(TSMC)が日本国内に新工場を建設します。
小林 はい。私はこれを歓迎しますし、これが第一歩になると思っています。そしてやはりその先を考えなければなりません。日本に建設されるTSMCの工場で製造が予定されているのは、現時点では20ナノメートル台(ナノは10億分の1メートル)の製品ですが、世界の最先端の製品は3~5ナノメートル台の世界に既に入っていて、その先の次世代の半導体の開発が始まっているのです。
この次世代半導体についても日本がどう取り組んでいくのか。日本だけでできなければ、どういうパートナーと組むのか。こういった話も同時に進めなければいけません。さらにその先には例えば光電融合をはじめ、いろいろな技術が出てくるので、そこでどう勝負していくのか。目先のことだけではなく、少なくとも今後10年くらいのスパンを見据えた上で、どういう産業にしていくのか。これを考えることが重要です。
─ その場合、国家はどんな役割を担いますか?
小林 例えば、10年先の姿を作り、そこを目指していく際、国としてどれだけ投資していくのか。民間とどう役割分担していくのか。そこが非常に重要な視点だと思っています。政府だけが旗を振っても、民間企業が本気にならなければ意味がありません。
【経済産業省】半導体産業の育成に向け、3段階の強化計画を提示