2021-12-02

【再エネ普及の課題解決へ】「道路で太陽光発電」でENEOS、NIPPOを惹き付けたMIRAI‐LABO

赤枠内が道路で発電するMIRAI‐LABOの太陽光パネル「Solar Mobiway」

2021年7月の静岡県熱海の土石流災害。原因の1つとして森林を伐採して設置したメガソーラーの影響も懸念されている。再生エネルギーの普及が求められる一方で新たな環境問題も浮上する中、再エネ利用の全体構想を描き、NIPPOやENEOSを引き付けたMIRAI‐LABO。創業以来、「環境一筋」できた同社の環境事業とは--。


新型コロナワクチンの
バックアップ電源でも活躍


 環境後進国――。日本は今、世界からそう見られている。

 2021年10月、第6次エネルギー基本計画が決定。再生エネルギーを主電源に据え、2030年度の再生可能エネルギーの発電比率を36~38%にする。

 海外では1kw時あたりの発電コストは太陽光が最安と言われるが、2020年上半期、世界の太陽光発電コストは5.5円なのに対し、日本は13.2円。山岳が多い日本は、土地造成コストがかかってしまう。

 CO₂の吸収や保水機能を持つ森林伐採による災害や生態系破壊の問題も出てくるなど、太陽光発電の限界も見え始めている。

 こうした中、国土の狭い日本で太陽光発電を普及させる切り札と言われているのが、道路で太陽光発電をする技術。

 この技術を国内最大手の道路舗装会社NIPPOと共同開発するのが、東京八王子に本社を置く、2006年創業のMIRAI‐LABO(ミライラボ)。

 道路に「太陽光パネル」を敷き路面で発電、発電した電気を「蓄電池」に保存して、夜間は「LEDライト」などに使用する完全独立型の電源システムを開発。

 今、世界で普及している太陽光パネルは結晶系で割れやすい。そのためフランスではパネルを強化ガラスで覆い、強度を出す研究を進めているが、ミライラボはパネルそのものを見直し、「柔軟性のある非結晶のパネルを研究・開発」(社長の平塚利男氏)、高耐久を実現した。

 また、通常、太陽光パネルは斜めに設置して効率よく発電するが「平らな道路、日陰や悪天候でも発電可能な研究を進めてきた」という。

 ミライラボの創業者・平塚氏は高校卒業後、電電公社(現NTT)のグループ会社で通信網の施工や交換機の保守、メンテナンスの仕事に従事。研究所に通い技術を身に付ける中、2005年、効率よく光を届け、省エネを実現する「高効率リフレクター」を発明して特許を取得。これを機に、翌年、現ミライラボを設立。

 創業時から変わらないという事業内容は「CO₂削減/省エネ型LED照明システム/自然エネルギーや新エネルギーの研究・開発・製造・販売・コンサルティング全般」など。今となっては注目のビジネスだが、会社設立時、法務局に登記に行くと「事業内容が不明瞭と言われ、3カ月間登記を受け付けてもらえなかった」と振り返る。

 だが、特許技術で開発した充電式特殊LED投光器『X-teraso』は既存製品に比べて軽量、かつ15メートル先の照度が2~40倍、さらにリチウムイオンバッテリー(Lib)が電源のため静かで使い勝手がよく、災害現場や工事現場などで普及が拡大。

東京電力やJR、KDDIなどのインフラ企業から自衛隊や消防局、県警、病院などに導入されている。

 17年に発売したリフィルバッテリー式発電機『G-CROSS』は4本のバッテリーを搭載。1本のバッテリーが空になると電気が切れずに〝無瞬断〟で満充電のバッテリーに切り替わり、電力を継続供給できる世界初の電源装置だ。電気が切れない特長から、日本赤十字の災害医療用テントの電源やJR東の災害対策用電源などで使用される他、最近では「新型コロナウイルスのワクチンを冷蔵するバックアップ電源でも活用されている」。

 18年には、中古EVから回収したバッテリーをモジュール単位に分解して再構築、リユースEVバッテリーと太陽光パネルを組み合わせた自律型ソーラー街路灯を福島県浪江町の国道114号線に設置した。

「太陽光発電で得たエネルギーを電気自動車から取ったリサイクルのリチウムイオン電池に蓄電して、超省エネのエネルギー照明として完結させた」形だ。

 自社の培ってきた技術を総動員してエネルギーの地産地消を実現。この拡大版が道路での太陽光発電技術につながっている。

MIRAI‐LABO 路面発電

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