2021-11-30

【エアライン2社】とも赤字決算 コロナ危機下で出た事業構造の差

2021年度第2四半期の業績について説明する日本航空専務執行役員の菊山英樹氏(中央)

緊急事態宣言が解除されても航空業界は苦しい環境が続く。

 ANAホールディングス(HD)の2022年3月期の通期業績予想は当初35億円の最終黒字を見込んでいたが、一転して1000億円の赤字に転落する見通しとなった。コロナの影響が想定を超えて長期化し、国際線はもとより、国内線の利用者数の回復も遅れているからだ。

 苦境を受けて同社は事業構造改革の一環として、定年退職や採用抑制などで22年度末までにグループ全体の1割に当たる約5000人を削減。全日本空輸(ANA)の航空事業は、25年度末までに2割超に当たる約9000人を減らす。

 ANAHD社長の片野坂真哉氏はかねてより「雇用はしっかり守る」と明言していた。今回の構造改革も自然減と採用抑制で達成する計画。20年に続いて希望退職を再び募集したとしても、強制的に人員を削減することは考えていないと述べる。

 ただ、パイロット不足が深刻化する「2030年問題」が横たわるだけに、パイロットの採用は進めるようだ。実際、コロナ禍の新卒採用でもパイロットなどの専門職は継続していた。

 苦境はライバルのJAL(日本航空)も同じだ。これまで未定としていた22年3月期の通期の業績予想は最終損益が1460億円の赤字を見込む。通期の最終赤字は12年の再上場以来初となった前期から2期連続。

 今回の両社の決算で注目されるのが利益でANAHDがJALを逆転したことだ。経営破綻からの復活以来、売上高ではANAHDに後塵を拝していたJALだったが、利益面ではANAHDに勝る形で「高い収益性にこだわってきた」(幹部)

 今回の決算でANAHDに劣った要因は「貨物」(JAL専務執行役員の菊山英樹氏)だ。ANAHDは貨物専用機を持っており、通常より2~3倍の運賃を記録し続けている貨物の需要を取り込んだ。JALは貨物専用機を1台も保有しておらず、「導入する計画もない」(同)

 貨物が両社の勝敗を分けた形だが、本業はモノではなくヒトの輸送。年末にかけて徐々に回復の兆しが出てきているが、辛抱の時期は続くことになる。

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