2021-11-23

【財務省】次官の「バラマキ批判」余波 予算編成は給付金が焦点に

衆院選で自民党が絶対安定多数を確保するなど与党が勝利したのを受け、岸田文雄政権は経済対策の取りまとめと2022年度予算案の編成に着手する。まずは新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生活困窮者などへの給付金が焦点となる。財務省の矢野康治次官が月刊誌に与野党のコロナ対策を「バラマキ」と批判し、物議を醸した余波がくすぶっている。初めての予算編成となる鈴木俊一財務相は、いきなり難しいかじ取りを迫られる可能性もある。

 11月2日の閣議後会見で鈴木氏は給付金に関し「コロナの影響で苦しむ非正規社員や子育て世代などに対し、より早く給付を行うことが重要だ」と指摘した。具体策について鈴木氏は「与党と相談して」と言及するにとどまったが、早くも財務省内では「現政権は公明とのパイプがなく、来夏の参院選を控え公明に配慮せざるをえない」(主計局)との声が出ている。

 というのも、経済対策で財政規律を重視すれば「官邸は財務省寄り」との印象が強まり、逆に“大判振る舞い”になれば「矢野論文」が蒸し返され、バラマキ批判が再燃する恐れがあり、経済政策一つも政局の火種になりやすい。鈴木氏が財政出動に関して慎重姿勢を崩さないのは、そうした背景を踏まえたものだろう。

 高齢化で膨らむ社会保障関連費用の他、厳しさを増す東アジア情勢を踏まえれば防衛費の増額も不可避な状況だ。2日の会見で鈴木氏は「真に実効的な防衛体制を着実に構築するのが急務だ」とする一方、「限られた財政資源を最大限に生かすため規模ありきの議論じゃない」とも述べ、歳出圧力をけん制した。

 ただ、自民党は衆院選の政権公約で「GDP(国内総生産)比2%以上も念頭に増額を目指す」と踏み込んでおり、防衛費の増加は規定路線となりつつある。国家安全保障戦略の改定を見据え、年末の予算編成作業では防衛費の増額幅も焦点になるのは必至で、岸田政権下でも思い切った歳出改革は難しそうだ。

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