2021-11-22

【政界】第2次岸田文雄内閣が本格始動 問われる経済安保と成長政策

イラスト・山田紳



経済の安全保障

 岸田政権内の役割分担の重要な一角を担う甘利が幹事長を辞任した。自身が小選挙区で敗れたことが理由だった。

 党内には「衆院選の仕切り役としてけじめをつけたいのだろうが、落選したわけではないし、絶対安定多数を確保した自民党も負けたわけではいない。辞める必要はない」との声もあったが、岸田は甘利の辞意を受け入れ、後任幹事長に外相の茂木敏充を起用した。

 衆院選を乗り切り、第2次岸田内閣を発足させた岸田がこれから進める重要政策のひとつが「経済安全保障」政策だ。岸田は自民党政調会長時代、新国際秩序創造戦略本部の本部長を務め経済安保を中心にした政権構想を練ってきた。

 経済安保を「我が国の生存、独立及び反映を経済面から確保すること」と定義し、(1)エネルギー(2)情報通信(3)交通・海上物流(4)金融(5)医療─の5つを重要産業と位置づけ、それぞれの基本政策を示している。

(1)エネルギー=電力の安定供給及び安全の確保▽電力事業者のサイバーセキュリティ対策の強化▽脱炭素化に向けた取組みなど

(2)情報通信=ネットワークの強靱化▽電気通信事業者のサイバーセキュリティ対策の強化▽研究開発・産業基盤強化のための資金確保など

(3)交通・海上物流=インフラの強靱化の推進▽安全対策の充実・テロ等対策の推進▽国際競争力強化等による製造基盤・技術基盤の維持など

(4)金融=金融システムの強靱化▽情報セキュリティの強化▽暗号技術等の高度化のための取組みなど

(5)医療=研究開発支援の強化▽国立感染症研究所の機能強化▽ワクチン・治療薬の研究開発能力の強化など

 いよいよ具体化させ実現に移す段階になった。岸田の掲げる「成長と分配の好循環」の成長戦略の柱となる。世界的な新型コロナウイルス感染拡大が収束した「アフターコロナ」「ポストコロナ」は新しい国際秩序が生まれるとされ、そのとき日本が国際社会で主導権を握るための国家戦略でもある。

 ただ、今の日本の産業界は中国と密接な関係にあり、経済分野で中国に毅然とした態度をとることは難しい。しかし、経済安保政策の推進は中国を強く意識せざるを得ず、様々なハレーションも起きることが想定される。

 岸田は経済安保政策の実現に向け、まずは「経済安全保障推進法」制定に取り組む。新設した経済安保相に小林鷹之を抜擢し、経済再生担当相に山際大志郎を起用した。小林は党戦略本部の事務局長を務め、山際は幹事長だった。2人は戦略本部の座長だった甘利とも親密な関係にあり、経済安保政策を重視する姿勢を前面に打ち出した。

 特に小林、山際を閣僚に起用する一方、牽引役だった甘利を党側に残したのは、様々な批判、不満の矛先が政府に向かうことを避け、党側の甘利が矢面に立つことを想定した役割分担の態勢だった。岸田にとって甘利は、源義経にとっての武蔵坊弁慶だった。

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