2021-11-18

『日本の成長戦略』をどう描くか? 日本総合研究所会長・寺島実郎氏に聞く

寺島実郎・日本総合研究所会長

10年後の日本人の食いぶちは何か?



 ―― 衆院選も終わり、本格的に岸田政権が動き出しました。自民党総裁選を含めた一連の選挙結果をどのように受け止めていますか。

 寺島 この2つの選挙を巡る議論の中で、例えば、「新しい資本主義」であるとか「成長と分配の好循環」というキーワードが登場してきて、政権側からも野党側からも分配なくして成長なしと。要するに、分配を高めなかったら成長しないだろうという考えが出てきています。

 ニュアンスの違いこそあれ、政権側からも野党側からも分配だという話が登場してきている。しかし、経済人としてこの問題を考えた時に残念ながらどちらの議論にも産業論がない。日本の産業界に分配を大いに増やせるような現状になっていればいいですが、今の日本の産業は、グローバル化という競争の中でものすごい勢いでシュリンクしている。

 例えば、2000年と2020年を比べると、粗鋼生産量やエチレン生産量、自動車の国内での生産台数も販売台数も一次エネルギーの供給もすべてこの20年間で2割下がっています。

 実体経済がそういう状況になっている中で、確かに中には業績のいい会社もありますが、一言で言うと、わたしは10年後、日本人の食いぶちは何かという問いかけをしないといけない。

 ―― 現実を見よと。

 寺島 例えば、税負担の根源でもある産業の現実が、成長時代の分配とはまったく違う。要するに低成長を通り越して、脱成長の中での分配を考えなくてはいけない話になっています。

 今まで分配の議論は、成長の中で解決できた。経済が成長すれば、誰しも少しは分配が増えるということです。ところが、今はマイナス成長さえ想定しなければならないような現実になっている。産業現場の実態がどうなっているのか? 日本人の食いぶちはどうしていくのか? という問題に対する真剣な問いかけが必要なのです。

 政治家だけではありません。経済界の人たちも耳触りのいい美しい言葉に惹き寄せられて、多くの人たちが「サステナブル・ディベロップメント(持続可能な成長)」などと言い出した。でも、わたしに言わせれば、日本にとって重要なのは、ディベロップメント(発展)です。


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