2021-11-18

【日本のガバナンスを問う・2】岩村充・早稲田大学名誉教授

岩村充・早稲田大学名誉教授

マスコミの風潮に違和感



 ―― 昨今、経営の混乱が続く東芝や不正偽装が相次ぐ三菱電機など、日本を代表する企業のガバナンスが問われています。こうした状況をどのように見ていますか。

 岩村 ここ数年、企業と投資家の望ましい関係などと言って、経済産業省が公表した『伊藤レポート』やコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の策定などを通じて、経産省は株主支配強化をうたってきました。

 マスコミも市場の評価を高めるには投資家との対話が大事だと言って、アクティビストと呼ばれる投資家たちを、正義の味方であるかのように持ち上げてきました。わたしはこうした風潮に違和感を持ちます。

 日本ではひたすらに、株主の言うとおりにする経営者が良い経営者だという雰囲気がつくられつつある。わたしは株主がモノを言うこと自体を否定するつもりはありませんが、株主の支配権だけを強化する制度変更は、長期的には従業員のモラル低下を生み、ひいては株主自身の利益にもならないと思います。

 そもそも、わたしは東芝にしても、三菱電機にしても、大きな問題が起こっているのは、指名委員会等設置会社であるということに注目しています。かつて、委員会等設置会社へ移行せよと主張した有識者の方々は、経営監視と執行を分離して云々という話だったはずです。

 ―― 要は、仏をつくって魂入れずでは意味が無いと。

 岩村 ええ。わたしはそれが残念でなりません。

 ただ、1つだけ言えることは、アクティビストたちの要求で設置された東芝の株主総会運営に関する調査委員会が作成した報告書を見ると、これまで散々株主支配強化の旗振り役だった経産省が、自身に関わる問題になると真逆に近い工作を行っていたことが読み取れます。行政府の二枚舌を暴くという点では、彼らも一定の役割を果たしたと言っていいでしょうね。


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