2021-11-15

日本が2年連続「化石賞」となる中、エネルギー基本計画が閣議決定

写真はイメージ

世界中で脱炭素に向けた取り組みが加速する中、政府は中長期のエネルギー政策「第6次エネルギー基本計画」を閣議決定した。2030年度に再生可能エネルギーが36~38%(従来計画では22~24%)、原子力は20~22%、水素・アンモニアが初めて記され1%、残りの火力が41%(同56%)という構成だ。

 19年度の構成比率は再エネ18%、原子力6%、火力76%だった。市場では「実現性に乏しい」との声も多く、運転時にCO2(二酸化炭素)を排出しない「非化石電源」比率を30年度に6割とする政府の構想は、絵に描いた餅になりかねない可能性をはらんでいる。

 温室効果ガスの削減には、発電時にCO2を出さない太陽光や風力といった再生可能エネルギーの拡充が欠かせない。しかし、欧州などと比べて平地が少ない日本では太陽光パネルを増設できる土地は限られる。原発もCO2を出さない点では同じだが、東京電力福島第1原発事故を受けて安全性への不安が高まり、再稼働がどこまで進むかは見通せない。

 そうした中、あるアナリストは「政府のシナリオを達成するには、2030年までの10年間で最低でも約13.4兆円の初期投資が必要。2050年までは計約70兆円に上り、その多くが洋上風力発電への設備投資となる」と指摘する。

 洋上風力の開発は、大手電力会社や再エネ専業のレノバなどが参画する方針を示しているが、風車の生産は日立製作所や日本製鋼所がすでに撤退。残る東芝は米GE(ゼネラルエレクトリック)と提携し、京浜事業所(横浜市)で風車基幹部『ナセル』の組立ライン構築を検討。「銚子沖や秋田沖など、洋上風力の促進地域で洋上風力機器のサプライヤーとなるよう、受注活動を展開中」(同社関係者)だ。

 先の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、議長国の英国をはじめ、46カ国・地域が2040年代に石炭火力を廃止することで合意。ただ、日本や米国、中国は賛同しておらず、国際環境NGO(非政府組織)から、日本は温暖化対策に消極的な「化石賞」に2年連続で選出された。

 国民の生活や経済活動に欠かせないエネルギーをどう確保するか。海外から厳しい視線を浴びる中で、日本の選択が問われている。

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