2021-11-12

【感染症対策のポイントとは?】日本医師会名誉会長が訴える「大きな方針は国が決め、都道府県が地域に合った対策を」

横倉義武・日本医師会名誉会長(弘恵会 ヨコクラ病院理事長)



医療機関主導の感染症対策

 ―― 夜の外出が感染者を広げたと指摘されましたね。

 横倉 ええ。そこで私も東京都にもコントロールしてもらうようにお願いをしていたのですが、その時期に会長を退任することになりました。しかしその後の7月頃から感染者は増え続けました。夏になっても、まだPCR検査が十分に行える状態には至っていませんでしたね。

 安倍首相はかつて社労部会長を務めていましたので、医療には明るい方でした。ただ、国民の皆さんは保健所よりも医療機関に行くのです。ですから、我々も医療機関が必要な検査をできるようにと願い出ました。

 そして安倍首相からは検査を保険適用にしようと判断していただいたのですが、自己負担分を国が払うため難しいと、またコントロールされました。それで十分検査ができなかったと。

 ―― その後は感染者の増減を繰り返し、11月から12月にかけて急増。その結果、再び緊急事態宣言を出さざるを得なくなりました。この間、病院のベッドの確保については、どのような対応をしていたのですか。

 横倉 徐々に増やしてはいたのですが、感染症対応のベッドは急には増やせません。それに伴って医師や看護師も必要になりますからね。特に重症になったら人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)を使わないといけません。このECMOの管理には、常時2~3人の看護師がついていなければなりません。

 1つの転換期は昨年の秋だったと思います。このときに医療機関主導の感染症対策に切り替える必要がありました。現場の医療機関に主導させる感染症対策です。感染症については、内科や外科、小児科の医師はある程度のことは分かっています。医療現場に任せておけば良かったなという想いがありましたね。

 ―― PCR検査で保健所の対応が遅いという声も出ました。

 横倉 保健所がオーバーワークになったということです。ですから、こういった仕組みを転換していかなければなりません。今年の夏に全国的に感染者が急増しましたが、そのとき保健所は入院のコントロールもしていたのですが、ほとんどコントロールできなくなっていました。

 在宅で診察を受けても大丈夫な患者さんも病院にいたわけです。9割は在宅で診れる状態でした。ですから、そういった医療体制全体を適切に管理する仕組みが必要です。地域の医療機関の協力があればできます。

 ―― その場合の司令塔は。

 横倉 今は都道府県知事の管轄の下にあります。しかしながら、大きな方針は国が決めなければなりません。ただ、都道府県によって感染の具合など、ずいぶん事情が違います。ですから、都道府県知事の権限で、地域にあった形でやっていくということが必要だと思います。

 もちろん、権利を制限するようなことは誰もが嫌がります。しかし、今回のような緊急事態下において、現行の感染症法や新型インフルエンザ等対策特別措置法で知事に与えられている権限が行使しやすいような仕組みを作るべきではなかろうかと。

 その延長線上に憲法改正が必要かどうかという論点が出てきます。これは国民の皆さんでよく議論していただく必要があるでしょう。我々が医療をやりやすいために憲法改正をするということにはいきませんからね。

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