2021-11-16

売上高目標10兆円!【大和ハウス ・芳井敬一】がポートフォリオの基軸に据える『まちの再耕』

大和ハウス工業社長 芳井敬一

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地域特性に合わせた再耕を!


〝再耕〟が行われている横浜市・上郷(かみごう)ネオポリス


 同社は1960年代以降、郊外型の住宅団地『ネオポリス』を全国で61カ所開発。このほか、『フローラルアベニュー』というブランドの開発も手がけている。

 マイホームを建てたいという多くの人のために、その夢を叶えようとしてきた。50年以上が経つ今、先述のように人口減や少子化・高齢化が進み空き家が目立ってきた。

 一番の問題は、地域コミュニティのつながりが薄くなってきたことである。

「昔は、隣組で何かあったら、おにぎりを握って何かやろうということがありましたね。今はそこが厄介なことがたくさんあるし、LINEだとか、画面で顔が見えるようになって、そういうつながり方も登場して、つながり方も変わってきた。つながっていることでの安心感、安定感をどうつくっていくかですね」

 全てを自分たちだけで解決はできないが、自分たちがやれることをやっていこうという姿勢。

 現在、手がけているのは東西2カ所でのプロジェクト。1つが、横浜市の『上郷ネオポリス』での再耕である。

 少子化で近くの小学校は閉校、商店街も廃業する店も出てきたという中で、2019年秋、コンビニエンスストア併設型のコミュニティ拠点『野七里テラス』を開設。

 地域住民が集い、食事したり、会話ができるようなコミュニティスペースをコンビニ脇に設けた。コンビニの店員や施設運営のボランティアは地域住民に引き受けてもらい、地域の自治運営も生かすような仕組みづくりである。


野七里(のしちり)テラス


 もう1つのプロジェクトは、兵庫県三木市の『緑が丘ネオポリス』。地域特産のミニ胡蝶蘭『COCOLAN(ココラン)』の栽培施設を建設し、新たな雇用の創出を図っている。これは近隣の大学から栽培技術を指導してもらうなど、大学との連携の実践でもある。

 横浜市と兵庫県・三木市以外にも、北陸は石川県加賀地方や茨城県、大阪・阪南タウンなど6カ所で、地域の住民との話し合いに入り、再耕を実践していく予定だ。

 その地域の特性に合わせ、また資源掘り起こしにつながるような再耕を手がけていくということである。社員の家族からの手紙 今はコロナ危機下で、生き方・働き方改革が進む。このコロナ禍の約2年の間で、一番嬉しかったのは何か? という質問に、

「社員の奥様から、手紙をもらったときのことです。昨年の5月に現場の作業を全部止めました。よくぞ決断してくれた、ありがとうという手紙です。ありがとうと言われると、人は嬉しいですよね」と芳井氏は笑みを浮かべる。

 コロナ禍当初は、ワクチン接種もなく、マスク不足も加わって、人々の不安感はピークに達した。その中を、込み合う電車で通勤する夫を、不安げに見送る家族もつらい思いでいた。

 そこで芳井氏は思い切って、建設現場の作業を停止する決断を下した。昨年4月26日から5月11日までの2週間余の作業停止。経営的には厳しい決断である。

「厳しいです。現場がやる気になっていますからね。あの頃は、人が1人でも命を落とすと、現場が止まるわけです。僕の勝手な論法ですが、人が1人死ぬまで現場を止めないよりも、先に止めた方がいい。そういう決断をするということを皆さんに伝えて、そこは有無を言わせない。ただし、どうしてもこの日に引き渡しが決まっていて、お客様が納期で困ることになるようなケースは届けてくださいと。だから動かしている現場もありましたが、ほぼほぼ止まりました」

 新型コロナ感染症の第1波のときの決断である。

 コロナは一方で気付きも与えてくれた。ウェブ(WEB)で販売する戸建住宅『ライフジェニック』も販売好調だということ。

「30代、40代の若い世代がネットで調べて住宅展示場に来て、リアルで確認して購入するというやり方ですね」

 住宅販売も変化しつつある。

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本誌主幹 村田博文

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