2020-12-16

なぜ今、丸紅は水素に注目するのか?

相良明彦・丸紅常務



 アンモニアは水素のエネルギーキャリア(貯蔵、輸送媒体)としての役割に加え、火力発電の燃料として直接利用できる。

 JERAは、2020年代前半に碧南火力発電所(愛知県)でアンモニアと石炭を混ぜて燃やす実証試験を始める方針で、すでに実用化も見えてきたという。丸紅はこのJERAとも共同でNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託業務に参画しており、水素、アンモニア両面から事業化の可能性を探っている。

 相良氏は「輸入による水素が大規模に社会実装されるのは、輸送や貯蔵の技術の進捗を考えると2030年代になるだろうが、アンモニアはすでに肥料などに利用されており、既存のインフラを活用することができるため、社会実装は2020年代後半ではないか」と指摘する。

 その上で「いずれにしても、化石燃料から水素やアンモニアをつくるには、CO2が付随して出てくるので、CCUS(CO2の回収・活用・貯留)といった技術開発がセットになってくる。また、社会実装に向けては、水素やアンモニアの利活用を企業に促す制度整備が重要になる。丸紅は、資源エネルギー庁が主催する水素やアンモニアに関する協議会の主要メンバーとして参加し、必要な制度整備について関係者との協議を継続している」と語る。

総合商社のアジェンダとは?


 菅義偉首相が2050年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを宣言するなど、世界中で地球温暖化対策に取り組む機運が高まっている。また、経済産業省では現在、中長期のエネルギー政策「エネルギー基本計画」の見直し議論を進めているが、今後、水素やアンモニアなどの活用は欠かせないものになるはずだ。

 丸紅は国内でも水素活用を進めようと、宮城県富谷市で既存物流網を生かして、太陽光由来のグリーン水素を一般家庭や公共施設へ配送する実証実験を実施中。福島県浪江町においても事業化調査を実施している。

「当面は国内の複数の地域で地産地消型のサプライチェーン構築に注力し、その延長で大規模な輸入を伴う国際的なサプライチェーンの構築を図りたい。総合商社も、今はカーボンニュートラルや環境への取り組みにおける様々なソリューションを社会やお客様に提供することが経営のアジェンダ(経営課題)になった。これほど市場から新事業創造と環境対応を求められたことは記憶にないが、既存の化石燃料ビジネスとのバランスにも留意しながら、その期待に
応えられるようチャレンジしていきたい」と語る相良氏。

 水素社会の実現に向けまだまだ課題が多いのは事実だが、総合商社ならではの知恵とノウハウを生かして脱炭素社会の実現に結びつけることはできるか。

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