2021-11-02

【日立】スペイン鉄道会社から 約1千億円の保守契約を受注

写真はイメージ

製造業の強みを生かしつつ、データを駆使した「デジタル製造業」への転換を急ぐ日立製作所(小島啓二社長)。その象徴ともいえる鉄道事業の基盤強化が進んでいる。

 日立はスペインの鉄道運営会社から高速鉄道車両について、約980億円でメンテナンス契約を締結した。対象となるのは2022年後半に営業運転を開始する予定の高速鉄道で、2052年までの30年契約。メンテナンス事業はコロナ禍にあっても景気の影響を受けにくく、安定した収益が見込まれる。また、車両の故障の予防や修理は、同社が成長エンジンと位置付ける自社のIoT基盤『ルマーダ』との相乗効果も期待できる。

 鉄道事業を巡っては、8月に仏電気メーカーのタレス社から鉄道信号関連事業を約2150億円で買収することを発表。執行役副社長のアリステア・ドーマー氏は「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス、マース=移動を軸とする次世代サービス)事業を強化する」と話しており、同社は単に鉄道車両を製造(受注)するだけでなく、IT技術を活用して新たな事業を創出したい考えがある。

 2009年3月期の巨額赤字の計上以降、構造改革に着手してきた日立。利益率の低い事業を次々と切り離し、業績は及第点でもIoTのシナジーが薄いと判断すれば「御三家」と呼ばれた日立化成も売却。最後に残った「御三家」の日立金属も米投資ファンド・ベインキャピタルなどに売却する方針だ。

 一方で、様々なデジタル技術を持つ米IT企業のグローバルロジックを1兆円超で買収するなど、攻めの投資も加速。攻めと守りで手を打ち、日立の「聖域なき構造改革」は最終章を迎えている。

 もっとも、日立のデジタル製造業化は、国内では一歩先を行くが世界を見渡せば、独シーメンスが先行。米ゼネラル・エレクトリック(GE)も巻き返しに必死。今後、日立が世界で存在感を発揮するには、海外展開の速度がカギになりそうだ。

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