2021-11-01

スゴすぎる!【レノバ 木南陽介】の再生可能エネルギー論「いろいろな企業・地域と の連携で日本の強さを!」

レノバ社長CEO 木南陽介氏

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秋田・由利本荘市沖の洋上風力が注目されて

「カーボンニュートラル政策が打ち出され、本当に号砲が鳴ったというふうに思ったんですね。それから1年が経ちますけれども、例えばエネルギーミックスの数字も再エネ比率が高くなり、意欲的な目標になっています」

 木南氏は、日本のエネルギー戦略が大転換し、「それが具体的な数値で現れている」という認識を示し、次のように続ける。
「電力系統の運用、送電線の運用や増強にしても、プッシュ型になって物事の進め方が早くなりました。ここでやりたいと手が挙がったら、それをリストアップして整備を進めていくというやり方。そういう事例の検討シナリオだとか、環境アセスメントというのは丁寧過ぎたところも少しあったと思うんですが、これの短縮化だとか、スピード化も進み、かなり具体的な知恵が出てきましたからね。物事の具体化、加速化はこの短い1年間で相当進んだなと思っています」

 木南氏は、日本のカーボンニュートラル策についてこう語りながら、「ただ、あの目標値は相当高いし、相当ハードルが高い」という感想を述べる。
 例えば、2050年の一大目標に向かって、中間地点の2030年時点での電源構成目標。
再生可能エネルギー比率は〝36%~38%〟へと引き上げられた。
 それまで、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー比率は〝22%~24%〟という水準の目標であった。

「10何パーセント増やすというのは簡単そうに見えて、ものすごいハードル。実現に向かっては、かなりの規制緩和も求められ、インフラ整備も必要。今の送電線のものだと目的地に届かないというところがあります」

 例えば、洋上風力で有力な新電源を開拓したとして、それを電力消費地にどう送電するかという課題。
 風の資源は、地理的に北の方が豊富。洋上も陸上風力も豊かな北海道から本州へ送電するとして、それにふさわしい送電容量を持つ送電網・設備が不可欠。

   レノバの風力発電(イメージ)

 2018年秋の北海道・胆振東部地震ではブラックアウト(地域停電)が起き、北海道自体が電力確保に追われた。北海道と本州間の電力融通を図るため、『北本連系』の送電能力を60万㌔㍗から90万㌔㍗に増強。さらに30万㌔㍗増強しようという措置が取られてきた。
 今後、全国規模で再生エネによる電力を拡大していく中で、社会全体をにらんだインフラ整備も同時に進めなくてはならないということである。

 今、レノバが秋田県由利本荘市沖で準備を進める洋上風力発電。6年前から同社が地元関係者の同意を得て開発を進めてきた事業で、70万㌔㍗級の出力を考えた大規模開発である。
 原子力発電1基分は約100万㌔㍗で、ほぼそれに近い発電能力だ。現在、レノバは太陽光やバイオマス発電を中心に全国26カ所で再エネ事業を行っているが、その発電能力は約
41万㌔㍗。

 来年(2023年)末までに、国内4カ所のバイオマス発電が稼働し、ベトナムでは大型陸上風力発電が稼働する予定。これで発電能力は約92万㌔㍗になるが、もし、これに秋田・由利本荘市沖の洋上風力が加われば、70万㌔㍗が上乗せされる。一気に現状の4倍規模に膨れる。

 この秋田プロジェクトは公募案件で、東北電力、JR東日本エネルギー開発、コスモエコパワー(コスモ石油系列)と連合を組んでの申請。
 現在4グループが公募占用計画を申請中で、近く審査が終わり、11月中には事業者の決定が下される予定。

 もし、レノバグループが受注できれば、年間約100億円の利益が上乗せされるとして、同社の株価にも投資家の関心が集まる(ちなみに、同社の2021年3月期の連結売上高は205億円、営業利益は46億円)。

レノバ以外に4グループの参入で厳しい受注競争

「あの規模の洋上風力になると、われわれデベロッパーだけでは駄目なので、電力会社とかの了解を取り付けるだけでも駄目で、大規模送電線などのサプライチェーンの整備も不可欠です。全体の社会システムが追いついていく必要があり、今はそのトバ口にあるということですね」

 秋田・由利本荘市沖のプロジェクトは、洋上風力の先進地・欧州と比べて遅れを取っていたわが国がいよいよ本格的な洋上風力時代を迎える─という意味でも注目される。
 何しろ、発電所の建設、設備などの初期費用は3500億円強、操業開始後20 年間の運転維持費は2500億円強、撤去する場合の費用も約750億円という巨大プロジェクト。

 この公募にはレノバの他、九州電力系と再生エネ大手のRWEリニューアブルズ(ドイツ)が組んだグループ、三菱商事系と中部電力などが提携したグループ、東京電力ホールディングスなどが出資するJERAとJパワーと北欧の大手石油会社・エクイノールの連合、そして洋上風力で世界最大手・オーステッド(デンマーク)と国内風力大手の日本風力開発のグループと4つの企業連合も申し込んでいる。
 この激しい受注競争の中で、レノバはどう準備を進めてきたのか?

クリーンエネルギーの開発へ向けて

 まず、同社の取り組みを述べる前に、日本政府の再生エネルギー戦略の概要を見てみよう。
 FIT(固定価格買取制度)により、再生可能エネルギーの開発推進が本格的に始まったのは2012年(平成24年)のこと。
 2020年(令和2年)の日本国内の全発電電力量に占める再生可能エネルギーによる発電の割合は20・8%(前年は18・5%)で増え続けている。

 では、再生エネの中で発電の内訳はどうなっているのか。日本は太陽光発電を中心に推移してきており、2020年の太陽光発電の割合は全発電電力量の8・5%を占めて1位(前年は7・4%)。
 以下、水力発電が7・9%で続き、木材チップなどを活用したバイオマス発電(3・2%)、風力発電(0・86%)、地熱(0・25%)という順。
 太陽光、水力、そしてバイオマス発電に比べて、風力は1%程度とまだまだ少ない。

 グリーン革命(GX)の下、世界の再生エネルギー開発をリードする欧州は、年間発電電力量のうち、北欧を中心に40%を超える国が多い。欧州全体の平均値も38・6%に達し、化石燃料による発電(全体の37・3%)を上回るほどになっている。
 わが国も2050年のカーボンニュートラル、つまりCO₂排出を実質ゼロにするという目標の下、経済産業省は電源構成として、再エネ比率を従来の〝20%~22%〟の案から〝36%~38%〟に引き上げたという経緯。

 原子力発電は〝20%~22%〟という比率で、地球温暖化防止へ向けて、非化石燃料比率を6割に持っていく考えだ。
 2030年というと、あと8年余しか残されていない。それまでに、現在8割近くを依存する化石燃料(全体の76%)の一大削減を図らなければならない。

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本誌主幹 村田博文

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